《たとえ話》で直観的に分かる物理の考え方
6号
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こんにちは、予備校講師の田原です。
春期講習会が始まり、毎日、力学の話をしています。このメルマガで書いているような《たとえ話》も、実際に、授業で使っています。聞いたことがあるよ!と
いう顔をしている人がいたら、これを読んでいる人かもしれませんね。
物理Web講座は、5月スタートにします。
今週から読み始めたみなさん。バックナンバーを見てくださいね。第1号から話が続いているので、順番に見ると分かりやすいと思います。
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では、第6号のスタートです!
■真理の決め方
紀元前4世紀から16世紀まで、西欧での自然に対する常識は、アリストテレス自然哲学でした。
そこでは、感覚によって真理が決められていました。
簡単に言えば、
「キミが見たものが、真理だ!」
ということです。
16世紀におこったのは、真理の決め方の変更でした。
「見たものが真理だ!」から、「真理は、見ているものの背後に隠れている」に転換しました。
そうなると、隠れている真理を理性の力で見抜かなければならないのです。
ガリレオ・ガリレイが、慣性の法則を見つけた前提には、この真理の決め方の変更があります。
この変更があって、現在の物理学が誕生しました。
今回は、この真理の決め方の変更についてのたとえ話です。
では、たとえ話モードへ突入!
★「等速直線運動なんて見たことがありません」★
アリアリ君とガリガリ君は、物体の運動について調べていました。
アリアリ君は、自分が実際に体験したことを信じるタイプの人です。
一方、ガリガリ君は、体験について、疑いの目をもっています。
二人は、高さ2メートルほどの立方体の形をした、木製の箱を地面に置き、それを押し動かす実験をして、力と運動の関係を調べました。
ガリガリ君が一人で押したときよりも、アリアリ君も手伝って、2人で押したときのほうが、箱は、ほぼ2倍の速さで動きました。
二人は、同じものを見ました。
ここで、まず、アリアリ君に、力と運動の関係について何が分かったかを聞いてみましょう?
(?):力と運動はどのような関係にあると思いますか?
(アリ):ものが動く速さは、加えた力に比例するよ。一人で押したときよりも、二人で押したときのほうが速く動いたからね。君も見たでしょ。何回も確かめ
たから、本当だ
よ。
(?):じゃあ、力がはたらいていないときは、物体はどのような運動をするのですか?
(アリ):箱を押す人数が0人なら、箱は止まっているに決まっているよ。キミだって、水平な地面においた箱が勝手に動き出したらびっくりするでしょ。だか
ら、当然、力がはたらいていないとき、物体は静止しているはずだよ。
(?):じゃあ次に、ガリガリ君に聞きますね。ガリガリ君はどう思いますか?
(ガリ):もうちょっと考えさせてください。
(アリ):ガリガリ君、何を考えることがあるの? 真理とは考えるものではなくて、見るものだよ。今日、見たことが運動の真理だよ。ガリガリ君だって、2
人で押したら、速さが2倍になったのを見たじゃないか。それ以外に、何を考えることがあるんだろう。
(ガリ):‥‥‥‥。
翌日は、とても寒い日でした。
地面は凍りつき、ツルツルの状態でした。
ガリガリ君は、前日、アリアリ君がやったのと同じことを、そのツルツルの地面の上でやってみました。
一人で押したのにもかかわらず、箱は、前日2人で押したときよりも速く動きました。
そして、押すのを止めても、急には止まらずに、5メートルほど進んでからやっと止まりました。
ガリガリ君は、箱を動かすのを止めて、その場で考え込みました。
しばらくすると、ガリガリ君は「分かった!」という顔をして微笑みました。
ここで、ガリガリ君に、力と運動の関係について、昨日した質問を、もう一度してみましょう?
(?):ガリガリ君は、力と運動はどのような関係にあると思いますか?
(ガリ):それは、分からないよ。同じ力で押しても、地面がツルツルかどうかで、速さが違うんだ。今日より、もっとツルツルだったらどうなってしまうのか
考えていたんだけど、どう考えたらよいか分からなかった。でも、単純に「物体の速さが力に比例する!」とは言えないことが分かったよ。
(?):では、力がはたらいていないときは、物体はどのような運動をするのですか?
(ガリ):それを今、考えていたんだ。箱を押すのを止めても急には止まらずに、5メートル進んでから止まったのがとても気になるんだ。もし、もっとツルツ
ルだったら、どうなっってしまうのかをずっと考えていたんだ。
(?):もっとツルツルだったら、どうなるのですか?
(ガリ):少なくとも、5メートルよりも遠くまで進むと思う。10メートルとか15メートルとか‥。そして、もっともっとツルツルだったら‥‥
(?):もっともっとツルツルだったらどうなるのですか?
(ガリ):止まらないと思うんだ。もし、速さが遅くなるのならいつかは止まってしまうだろうし、地面が水平だったら、まさか、速くなることは無いだろうか
ら、物体が止まらないで動きつづけるためには、速度が一定であり続けなくてはならないと思うんだ。
(?):ということは、結局、力がはたらいていないときは、物体はどのような運動をするのですか?
(ガリ):一定の速さで、まっすぐ進みつづける運動をするはずだと思うんだ。
★たとえ話終了★
ガリガリ君とアリアリ君は、同じ現象を見ました。
でも、そこから導いた結論は異なりました。
アリアリ君が現象を肉眼で見たのに対して、ガリガリ君は、その現象の背後にある「限りなく滑らかな水平面での運動」を理性の目で透かして見たのです。
そうして、力のはたらいていない物体の運動が、等速直線運動をするという結論を得ました。
でも、ガリガリ君の肉眼の目は、一度も、等速直線運動を見たことはありません。彼は、肉眼の目よりも、理性の目を信用して真理を決めることにしたのです。
このようなことが、アリストテレス自然哲学(アリアリ君)の常識を、ガリレオ・ガリレイ(ガリガリ君)が破ったときにおこったのです。
物理は、自然現象を実験などを通して理解してく学問ですが、そのときに、アリアリ君の常識ではなく、ガリガリ君の考え方に基づいています。
これを理解していないために、物理につまづいてしまう人は、実は、結構多いのです。
最後に、もう一度、ガリガリ君に、次の質問をしてみましょう。
(?):では、ガリガリ君。キミは、力をどういうものだと思うんだい?
(ガリ):力がはたらかないときには、物体は等速直線運動をするのだから、力がはたらくと、物体の運動は等速直線運動からずれると思うんだ。だから、力っ
ていうのは、「物体の運動を等速直線運動からずれさせるもの」だと思う。ただ、そのずれをどう表したらいいかが分からないんだ。
(?):ガリガリ君、ありがとう。よく分かったよ。
■編集後記
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